水玉物語#024サーカスシティ
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冬のはじまりに 小さな軌跡を もう一度
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小さな星のラブレターの続きです。
リコに会えないまま、ななほしは街に帰り、いつもの公園に立ち寄ると、ハンカチに包んでポケットに入れて持ち帰ってきたてんとう虫を埋葬しました。そのまま公園でリコを待ったけれど、リコはいっこうに姿を見せませんでした。ななほしはもちろんリコがてんとう虫だったことには気づいていません。
ななほしはリコと新しいギターのおかげで新しい曲をたくさん書き、スランプを抜け出したけれど、なんとなく、とにかくリコに会わなくてはいけないと思いました。お礼も言いたいし。
そして来る日も来る日も公園で待ち続けました。天国の女神様はこれは困ったと思い、あきらめさせるために、天使を二人彼のもとに送りました。
天使は人間の子供に扮してななほしの隣に座り、リコのことを忘れるように、それとなくいろいろと話をしました。でもななほしは諦める様子もなく、いつの間にか季節は冬に近づきました。
少しずつ寒くなると、ななほしはあいつは薄着だからとリコに温かい上着を買いに行きました。二人の子供は雪が降ったら諦めるようになんとか約束して、女神様に頼んで雪を降せることにしました。
そして今年はじめての雪がひらひらと降り始めました。
それでもななほしは動かずそこに座っていました。
二人の子供は「ほら、雪は降ってきたよ」「雪が降ったら諦めるって約束したでしょう」とななほしに諦めるように言ったけど、
「ごめん。わかっているけど、動けないんだよ。リコに会って言いたいことがあるんだ。そうしないと俺はどこにも行けない気がする。それだけなんだ」とななほしが雪空を眺めながら言うので、二人の天使はすっかりななほしが好きになり、このままではななほしも死んじゃうと女神様に泣きつきました。
女神様もさすがにそれほどまでに思うのならと、リコをもう一度転生させました。今度はてんとう虫ではなく人間の女の子に。
ななほしは凍えながら、後少し、後少しだけとベンチにうずくまっていると、ふと、降り続く雪がやんだのを感じました。目をあげると、傘が差し出されて、
「バカみたい。こんなところで」
それはリコでした。
「ほら、やっぱり寒そうな格好だ。俺の考えはあっていただろう」戸震える声で言い、見ると子供たちはいませんでした。
冬の始まりのめずらしく、早く初雪の降った日に、リコとななほしは、その公園でもう一度出会いました。
君たちにはとうとう
冬の女神様も呆れたね
このお話の前のお話
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