うさぎの恋

水玉物語#048パステル

あれから初めての
雪が降る

冬の近づくころです。ずっと片思いしていた、とても美しくまるで手の届かないと思っていた女の人と結ばれて僕は幸せだったのに、彼女は突如うさぎになる病気にかかってしまいました。

僕はなんとか治す方法はないかと探したけれど、見つかりません。少しずつうさぎの毛に覆われ、目の赤くなった彼女が、

「次の雪が降れば私はうさぎになってしまうでしょう。そしてあなたのことも忘れて野に帰ってしまうでしょう」と言うので、

僕は慌てて冬の女神を探して、今年は雪が降らないようにお願いしようとマフラーを巻いて、寒空の下をさまよいました。

けれど、女神には会えず、雪が降ってしまいました。

僕が急いで戻ると、彼女の姿はなく、窓が開いていました。彼女はうさぎになっていなくなってしまったのです。僕は絶望しうずくまりました。僕にとって彼女はすべてだったのです。

それから三年が経ちました。男は今も窓を開けたまま、彼女を待ち続けています。いったいなぜ、彼女がうさぎにならなくてはいけなかったのか、男は何かを間違えたのかと自問自答しながら。

その日、あの夜以来、初めての雪が降りました。男は久々に泣きました。悲しくて、寂しくて後から後から涙が溢れ、目が赤くなりました。そしてみるみる手足がやわらかな毛に覆われ、うさぎに変わっていきました。すっかりうさぎになった男がふと部屋の中を見ると、カウチに寝転んだ最愛の彼女がそこにいました。

「どうして」男は驚きで震えました。

「私はずっとここにいたの。私がうさぎになってしまったからあなたには見えなかっただけ」彼女はうさぎの顔で微笑みました。その微笑みは前と同じ。

「そうか、なんだ、そんなところにいたのか。それはよかった。それは」

男は泣きながらうさぎの姿で彼女を強く抱きしめました。彼女も男を受け入れました。

やっと本当の私を見てくれたのね。

やっと本物の恋人になれたのね。

春になったら、野山をかけて
草原で寝転がり、愛を語り合いましょう