すみれの涙

水玉物語 #010千年街・フォーエバランド

暖かくて
優しい風が吹く
いつも花が咲いてる
そこは春の国



スミレとナナは幼馴染で家も隣同士です。幼い頃はいつも一緒にいたけど、成長するにつれて、昔のままナナに接するスミレに、ナナは素直になれなくなりました。ナナは高校からは別の学校通うことして、スミレのいない人生を送ろうとするけれど、誰にでも優しく人気者のスミレの噂はついてまわります。

ある日、ナナは夢を見ます。そこは春の国。

川下で花摘みを仕事するナノハナと、お忍びで城を抜け出した王子のスミレが出会う夢です。スミレには花を咲かせる不思議な力があり、ナノハナの仕事を手伝ってくれるうちに、二人はとても仲良くなりました。けれど、ナノハナはそのうち、スミレが王子様であることに気づき、隣国の虹の国の姫と婚約することを知ります。そしてとても悲しくなって、西の魔女に呪い魔法をもらいに行くのです。
ナナは夢を見ながら、「行ってはダメ」と何度も思いました。

ナナはまた夢をみました、今度は隣国の虹の姫になっていました。虹の姫はスミレのことが好きなのに、自信の無さと噂の絶えない王子に素直になれないでいます。そして春の国中の女の子が自分を疎ましく思っていると胸が痛くなりました。ナナは夢を見ながらどちらの感情もよくわかると思いました。

スミレと虹の姫の婚約の日、春の国中から贈り物が届きます。でも虹の姫はそれは悪意だから開けるのが怖いと、塔の上に閉じこもってしまいました。

スミレ王子は小さな菜の花のついた贈り物を1つ、ポケットに入れて塔をよじ登りました。そして、姫の前でリボンを解きました。それは花娘の菜の花が西の魔女にもらった箱です。姫は目を閉じたけど、スミレがその箱を開けた途端、とても美しいメロディが流れて、姫は目を覆う手を緩めました。

そこにはこう書かれていました。「虹の姫さま。私たちはあなたの心がわかります。誰よりもの深いあなたの心とともに幸せになります。どうか、この国を幸せな光で包んでください」姫はスミレを見つめました。

スミレは窓から外を眺め、
「ここは本当にいい国だね。僕たちはこの幸せを守らなくては」と微笑みました。

ナナが夢から覚めるとスミレがいました。ナナは思い出しました。小さい頃から、どんなことがあっても、スミレがいれば、世界には春がくるって思えたことを。みんなスミレがいるだけで、春を思い出すこと。

だから、私も春の花になろう、スミレのとなりで。卑屈な心も嫉妬も妬みも猜疑心も劣等感も、春に溶かして、世界に花を咲かせるように。

春風が頬撫でて、誰もが微笑む
この世界の魔法