水玉物語#006 水玉国
窓の外を眺めていると 月が扉のように開いて そこからうさぎが梯子を下ろし 僕のところへやってきました
セルは地下鉄のホームで白く光る蛍光灯の明かりに手をかざしながら、この世界は何かおかしいと思います。 ふと足元を見ると小さな四角い箱が落ちていました。旧時代のカセットテープ型蓄音機です。セルはそれを拾って、地下鉄乗りました。四角い箱を耳に当てると音楽が流れ、目をつぶると景色が見えました。 その次の満月。高層マンションの一室の窓から空を眺めていると、月の表面に扉が現れたそこから這い出たうさぎが梯子を下ろして、セルの下まで降りてきました そしてお迎えにあがりましたと、セルの手を取りました。セルはウサギと一緒に月の扉を通り、その向こう側に出ました。
そこは一面草原の地表で、今まで見ていた世界はこの星の中、水玉国という小さな村で描かれた夢を見ていたと知ります。物語を書いているのはかつてはこの地表が栄えていた頃の水玉国の王族の末裔のシルクという少年でした。 大きな木の下にお茶の準備ができていて、セルを招待しました。シルクはお茶を注ぎながら楽しそうに言いました。 「僕はただ夢を書いているんじゃないよ。いつかまた中と外をひっくり返そうと思っているんだ。誰も気づかないうちに入れ替えるんだ。君も手伝ってくれるといいんだけど」 セルはどこかでこれと同じ言葉を聞いてような気がすると目を閉じて、頷きました。