水玉物語#022千年街
美味しいよ 栄養あるよ たくさん食べるよ
ある東の国の田舎にある小さな村「玄米村」で食堂を営む大家族ハンさんの家の末娘メイメイは、この頃少し元気がありません。もっと言えば悩んでいます。でも誰も気にしないのです。大家族だから。だからメイメイは怒って、決して入ってはいけない魔物山に入って心配させようとしました。
すると猫の魔物がついてしまったのです。どうしよう、と困っていると、同じように鳥の魔物がついた幼馴染のイーランに出会いました。メイメイは魔物がついたとなれば両親や兄弟たちを悲しませると、旅に出ることにしました。イーランもついてきました。バスに乗って汽車に乗って船に乗って、二人は千年街に来ました。その街には猫の耳をつけた人も背中に羽をつけた人もいたので、なんだ、ここはみんな魔物付きかとメイメイは驚きました。
その街でお腹が空いたイーランが引き寄せられて入った「餃子楽園」のチンさんがなんと玄米村の出身で、二人に二階の部屋を貸してくれました。二人は美味しい餃子を食べて銭湯にも行きました。でもチンさんには悩みがありました。実は最近近くにできた「餃子天国」に客を取られて、店をたたもうと思っているというのです。しかもその店は玄米村と敵対している「白米村」のワンさんがやっているといいます。負けず嫌いのメイメイは故郷のためにもそれはなんとかしなくてはとあれこれ考えました。
そして中庭の置き去りにされていた屋台をみて、ひらめきました。「イーラン、これ直すよろしい」とイーランに道具を渡しました。するとイーランは今まで見せたことのないほどキラリとして、その屋台を瞬く間に素晴らしい、前よりもずっと良いものに仕上げました。チンさんは「おお、そうか。こいつはあのシャンさんの子孫だったか」と言いました。シャンさんは玄米村を作った伝説の男でした。イーランは目覚めたのでした。
メイメイとイーランは玄米村に里帰りしたチンさんを見送り、「私たちがんばるよ」と、故郷の玄米でおにぎりを作り、それからハン食堂秘伝のシュウマイ、イーランの好きなスープを作り、屋台をはじめました。それも餃子天国のすぐ近くです。
「うまいよ。栄養あるよ。元気になるよ。幸せになるよ。たくさん買うよ」
白米村のワンさんと争いながらも、どんどん人気になりました。ワンさんたちとも毎日いがみ合ううちに、結局仲良くなってしまいました。
そしてしばらくするとチンさんから手紙が来て、故郷で恋人ができて楽しくやっているので、店を譲ると書いてありました。二人は餃子楽園をイーランの魔法で改装して、「美美猫飯店」(メイメイマオハンテン)に変え、故郷の食堂に負けないような良い食堂にしました。メイメイはふと思いました。
『そう言えば、私は何か元気がなかった。何か悩んでいた。でもその悩みはいつのまにかなくなったな。あれは魔物じゃなくて神様だったかもしれない。毎日、楽しい。今日もたくさん働こう』