水玉物語#012メランコニア
窓から見える 夕日は格別に赤く あの日も こんな夕暮れだった
ニルとメロディはそれぞれの理由で生きる希望をなくしていました。
寒空の下で、公園のジャングルジムの上に座って赤いスイカを大きなスプーンで食べていたメロディに、ニルは自分と似たものを感じて、部屋に誘いました。
そこは窓ガラスもない、電気も止まった、月だけが綺麗に見える一室でした。かろうじて使えるのはガスコンロだけ。
二人はそこでお湯を沸かし、小さなお風呂に入りました。そして毛布にくるまって眠りました。
「ねえ、このまま生きる希望も意欲もなく何もせずに、どこまで生きられるかな」「さあ、どうかしら」
そして二人はその時まで一緒にいることにしました。
けれど次の日から、すべてが好意的に働き、世界は彼らを生かそうとしているのか、住むところも食べるものも着るものもどこかから与えられ、それから16年が経ちました。でも二人の心は止まったままです。
そんなある日、謎の怪物が現れ、どちらか一人を魔法の国に連れて行ってくれるといいました。ニルはそれはメロディだと言い、メロディが行くことになりました。
最後の日、二人はいつものように岬の家から降りたところにある町の食堂(サンセットムーン)で朝ごはんを食べ、それぞれ声をかけてきた人と出かけ、夜になり、家に帰ります。怪物は二人のあまりにあっさりした態度にやきもきしました。でもニルはバイバイと言って、見送りもせず眠ってしまいます。メロディは変身した怪物に乗って空に向かいました。
次の日、ニルは荷物をまとめて、その家を後にしました。一人になると今までのように世界は味方してくれなくなり、すぐに一文無しになりました。
はじめにメロディに出会った公園の木の下で力尽きた頃、空から雪が舞い降りて、「そうか、僕は君が好きだったんだ。好きだったから、あの時、声をかけ、好きだったからずっと一緒にいた。君がいればよかった。ただそれだけだったんだ」と思いました。
ニルは目を閉じ、幸せな気持ちになりました。
夢の中、真っ白なベッドで眠るニルを誰かが起こしました。眩しくて目が開きませんでした。でも多分、それはメロディだろう。世界はいつだって僕らの欲しいものをくれるから。それは絶対メロディだろう。とニルは思い、ゆっくりと目を開けました。