水玉物語 #013 千年街
この世界は水玉模様 どこへだっていける 妖怪にだってなれる
千年街で一人遊ぶメイにはいつも妖怪たちが見えていました。けれどいつからか妖怪たちがよく見えなくなって一人ぼっちになってしまいました。さみしい時いつでもそばにいてくれた九尾の狐にも会えなくなりました。ぼんやりと曖昧になってしまった妖怪たちとメイは街で一番古い木を訪ね、その下でキュウビを待ち続けます。
そんなメイにキュウビは最後の夢を見せます。もう僕たちのことは忘れて大人におなりと空を飛びます。メイは妖怪になりたいと言いたかったけど、風が強く声が出ない。
だから笛を吹きました。
するとその音は天高く響き、雲の鳥も、龍神さまも神様を乗せた船も鬼火や精霊たちも少しだけ振り返り、僅かに微笑み、やがてどこからかお囃子の微かに音が聞こえ、世界は優しい色をして夜が明けるまで輪になって踊りました。
広い世界を見わたせば、人間も妖怪も神様もいて、世界はこんなにも優しいと気づく、小さな奇跡を描いた物語です。
「妖怪になりたい君へ] 妖怪になりたい君は 世界中のすべてを欲しがるわけではなく 偉くなって褒められようというのでもなく これといって有名になろうというのでもなく ほんの少し面白い存在になりたい 大きな声で伝えたいことがあるわけではなく 正義の味方になりたいのでもない この世界の隙間でクスッと笑える 存在になりたい その角を曲がったら、 その先へ行ったら 明日になったら、 明後日が来たら 世界が一変するわけではなく ほんの少し可笑しくなる、 小さなバッジをつけた そんな妖怪になりたい
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