パラディシュナ

水玉物語#003 パラディシュナ

お皿の上に街をひとつ
塔をひとつ
山をひとつ
川を一本
鳥をひと群れ
ここは神様の楽園
いつも暖かくて
悲しみのない世界
銀の器に虹のリボンをかけて

お菓子屋で砂糖菓子を作る仕事をしている女の子エリーは、砂糖菓子を簡素な住まいに1つずつ持ち帰って、大きなお皿の上に世界を作っていました

山を1つ、街を1つ、公園を1つ、鳥をひと群れ、森を1つ。

小さな声で歌を歌いながら。

ところがある日、世界の終わりがやってきたのです。雲の間からやってきた光をまとった天使たちが、この世界からいろんなものを集め、大きなお皿の上に乗せて、神様たちの楽園パラディシュナを作り、人間はもう不要となったと告げられました。

エリーはひとりだけ人間の代表に選ばれ、動物たちと共にお皿の上に乗せられ、神様たちのために働くことになりました。そこは神様や大天使たちが疲れを癒す楽園です。

エリーたちはそこでそれぞれ割り当てられた仕事をし、夜は大きな木の下で集まって眠りました。ここは暖かくて、危険もなくて、神様たちに使えるのは嬉しいこと。お腹が空いたら、木になったひとつ食べればお腹いっぱいになる実を食べればいい。

でも何かが切なくて、エリーは歌を歌いました。

ある夜、通りかかった大天使はエリーの歌を気に入り、毎夜聴きにくるようになりました。

大天使は人間にはもっと価値があると、神様たちに伝え、エリーは歌を歌う仕事をすることになりました。神様たちはエリーの歌う切なさを大層気に入りました。

大天使とエリーはいつしか恋をしました。

エリーは恋を歌うようになり、その歌に神様たちは腹を立てました。神様たちが望むのは楽園に憧れた切ない気持ちでした。でもエリーは大天使を想う気持ちが抑えらず、エリーを追放するかどうか裁判が行われることになりました。大天使は懸命にエリーを庇ったけれど、やはり楽園に人間はいらないと判決が出され、エリーは地上に落とされ、大天使にも罰が与えれました。

地上に降りたエリーは悲しみを歌いました。残された人々も歌いました。その歌を聞いて、地上の植物たちが、エリーのためにパラディシュナへと蔓をのばしました。それに腹を立てた神々はいなくなってしまいました。

エリーは神様のいなくなった、すっかり緑に覆い尽くされて美しかった楽園では無くなってしまったパラディシュナへ降り立ち、羽のなくなった大天使と再会します。

大丈夫、
魔法は消えることはないから